saienji's blog プププのプゥだぜぃ

ニューハーフな心で世界をおしおきよ!!

二〇三高地

坂の上の雲 第3部「二〇三高地」、チェック終了、、ふう、疲れた。
このドラマ、もう「江」なんかとは、やってることが異次元の世界になってますね。
多分、民放でいくら気合いを入れて、こういった大ドラマを作ったとしても、この世界には追いつけないと思います。
つまりこういうスタンスでは、民放はスポンサー付きでドラマを作れない(笑)。それは制作費の問題じゃなくてね。
良く行って、「さだまさし」とか「長渕剛」あたりが主題曲を提供するのが似合ってるというレベルの物語作りでしょうね。
なんたってNHKのスポンサーは「国民」ですし、しかもNHKってその割りには国民の意向を無視して「これが表現だ!」ってゆー番組作りしますから(笑)。
(「これが娯楽だっ!」って言って凡作を多数輩出しちゃうNHKですが「これが表現だ」の方は中々、凄いです。)
二〇三高地」なんかは、その最高峰の一つじゃないでしょうか。
でも、正直言ってこのドラマを純粋な意味で「娯楽」として視聴した(出来た)人ってすごく少ないんじゃないかと思います。
ある意味、「二〇三高地」自体がドラマであるという存在故に、話題になったNHK「無縁死」とかのドキュメンタリー番組よりしんどいんじゃないかと。
淡々と・延々と続く、リアルな作りの戦闘シーン見てるとつらい、、、普通のドラマ作りだと、そこかしこに兵士同士の感動的な会話があったりするんだけど、「坂雲」の場合は、ただ極寒の山肌に這い蹲った無名の兵士達が、撃ち殺され、爆風で吹き飛ばされ、相手の耳にかじり付いて取っ組み合う肉弾戦が続くだけですもんね、、、。
でも普通のドラマ展開みたいに「人間は誰も悪くない、悪いのは(戦争)そのものだ。」みたいなごまかしをやらなかったのは立派です。
戦争は、「人」と「国」が作るって原理を、ちゃんと外さない所が偉い。
司馬先生の場合は戦争を駆動するその「愚かしさのエンジン部分」の構造を、日本海軍と日本陸軍、あるいは乃木と児玉の対比で徹底的に描いていて、乃木は兵士を無駄に死なすだけの嫌になる程の無能指揮官 そして、伊地知参謀は唾を吐きかけたくなるほどの姑息な人間、みたいな回し方をしています。
ドラマの方では、乃木への評価も含めてそこまでの描き方は出来ないだろうなぁ、結局、その辺りだけは、誰も悪くなく人は総て被害者で「戦争」が全部悪いってわけのわからない括りの中に押し込んじゃうんだろうって思ってたんですが、児玉が旅順に乗り込んで行って乃木の指揮権を剥奪したり、伊地知を罵倒したりのシーンは、意外にもきっちり原作通りに描いてました。
それでもドラマ上では乃木の取り扱いはかなり丁寧で、見ようによっては名将というか悲劇の将軍って感じで恰好いいように見える逃げ場はこさえてましたが。
とにかく近代的な弾幕の前に、「肉弾・人死」によって陣地を確保する行為が、一つの恣意として行われ、次に味方からの援護砲撃によって自軍の兵隊が死んでいっても、まだその方が被害が軽微だとする思考が成り立つ状況が、当時の戦争なのだという事がひしひしと伝わって来たというだけでも、このドラマ、凄かったです。
原作から起こした映画やテレビドラマは結構見てきましたが、ある意味、これくらい原作の意向を汲んで作られたドラマも珍しいのではないかと思います。
それは幾ら制作費をかけたとか、「映像化不可能な原作のあのシーンを見事に再現」だとかの、部分では補えない原作の持つマインドの再生みたいな部分だと思うんですが。

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