真田丸 第16回 「表裏」
三谷脚本って真田丸で、色々な実験をしてるんじやないかと前に書いた事があるんですよね。
第7回「奪回」は、観客の声が流れないシットコムを想起させる回だったし。で今回はサスペンスホラー回。「黒い家」ならぬ「黒い城」。秀吉の「何言ってんだお前。何言ってんだ!」の怖さが未だに心の中でエコーしてる、、。
映画『悪魔のいけにえ』で例えるなら、レザーフェイスが加藤清正で、人肉喰らいの叔父ホイト・ヒューイットが秀吉(笑)、それで源次郎が一人城の中を逃げ回ってる感じ。
圧倒的な強さを誇るレザーフェイスに若者達がちょっぴりだけ反撃を成功させる部分も似てる、源次郎が関節技を決めた時はオッと思ったんですが、それをはね除ける加藤清正の不気味な強さが際だっただけで、、ああいう演出上の小細工も上手いなぁ。
ほんと石田三成と大谷吉継もインテリジェンスな方面で悪辣だし、茶々は病んでるし、対比効果で唯一常識人の秀長が「地獄で仏」みたいだし、あの家康ファミリーでさえ磯野家に見えるという凄さ(笑)。
(本多忠勝の藤岡 弘、さん起用は、映画「清須会議」で柴田勝家を演じた役所広司さんの使い回し方とちょっと似てるような気がしますね。)
源次郎が人質という立場上、この状況からは脱出不能で、しかもちょっとでも選択を間違えればGAMEOVERになりそうな感じは映画の「キューブ」、、あの緊張感が何とも言えませんでしたねぇ。
歴史大河というフォーマットで、これくらい遊べる人はそうザラにはいないでしょうね。
だから、この大河、映画やドラマ好きの人には、たまらないんじゃないでしょうか?
勿論、「歴史大河は歴史大河らしくなきゃ駄目だ!」って人にはお叱りを買うのかもしれませんが。
でもchikaが見てる限りには、最近の大河脚本の中で一番「歴史」に精通してるのは、三谷さんだと思うんですけどね。
PS ビールがそろそろ美味しく感じられる季節になってきましたが、「スーパードライ」って登場したときは爆発的な人気だったですね。
あれの勝因は「キレ」のあるビール作りに徹したからでしょうね。味わうのは後でいいでしょ、とにかくビールはグビグビって飲んで後を引かず、クーッ!旨い。でもう一杯!みたいなスピード感を味で体現しようとした所でしょうね。
真田丸の「運び」もそういう所ありません?
今回だって上杉景勝が、源次郎を大坂城に置き去りにして越後に帰国した下りは、延々と愁嘆場を用意しようと思えば出来た筈、ってか今までだと、そこを「感動的でしょ」とか押し売りしながらグダグダ展開してた。
でもそれを三谷脚本はやらない。だからと言ってその辺りの戦国時代の非情さを描けていないのかと言えば、そんな事は勿論ない。
これは「キレ」でしょ。
まあもっともビールとして「スーパードライ」は嫌いって人がいらっしゃるのは判っているんですが、ジュースをビールだと偽って最近は販売してたんだから、そこは許容して欲しいもんだと思いますが(笑)。