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ニューハーフな心で世界をおしおきよ!!

感動ってなんだ

saienji2010-07-13

大芝居」の次は「ウルトラc」の連発だった龍馬伝
龍馬が身代わりになった行為なんて、容堂公の慧眼の前ではあっさりバレバレ。
次にその容堂公自身が牢屋に直接出向いて半平太に暖かい言葉をかけ、結果、感激した半平太自らが東洋殺しを自白!(最初からそーしとけって、って容堂、初めはそんな人物じゃなかったような?)
さらにさらに前回、弥太郎らに今生の別れをした筈の龍馬が舞い戻って来て、半平太と再会。
無茶もこれだけ重ねてやられると換えって爽快ってもんで、楽しんでしまったじゃないのさ、この展開(笑)。
 この面白さ、どんな隠密行動が必要とされる時でも大声をあげまくってた龍馬が、今回は、驚く弥太郎に「大声を出すな」と口を塞ぐそのおかしさと同等。
 でも今回の体験を通じて、ついに福山龍馬は、あの歴史上のヒーローである「坂本龍馬」に変身するらしいから、こんなウルトラc連発の物語展開が必要だったのかも。
(でもでも確か1部から2部への変わり目の時にも、弥太郎ナレーションは「龍馬は変わった」とか言ってなかったっけ?)
しかしこの山場を迎えてchikaの予想は、「身分制を背景に近代的自我をかけての容堂と半平太の対峙」というシーン自体はあったものの、以蔵や半平太に対する作り手側の価値付けはいかに?という期待からすると、かなりはぐらかされた感じ。
 結局、「飼い犬」論でいくと、半平太は容堂公の飼い犬で、以蔵は半平太の飼い犬。
 二匹の飼い犬たちは、飼い主が気まぐれでかけてくれた暖かい言葉を胸に死んでいったという事なのね。
普通ならこれって「動物虐待」なんだけど、龍馬伝の中では容堂公にしても半平太にしても「歴史の中でそれは避けられなかった生き方」みたいな描かれ方をしてるから、人間ドラマぽくなっちゃう。
だから半平太が、己の死の間際になんとなく気づいた身分制からの解放への願いを、龍馬に託すわけなんだけど、これも劇中の感動とは別に、龍馬には「なんとなく」しか伝わっていないようだ。
で龍馬が「幕府が日本という国に付けてしまった苔のような汚れを洗濯しちゃるきに」と海に向かって誓ってみせても、具体的な部分は見えず、やっぱり「なんとなく」で、そのくせたちの悪いことに感動的だったりする。(構造的には前鳩山首相の演説によく似ている)
所で「走れメロス」という話には「なんとなく」がない。
実際には登場人物達の胸に色々なものがある事は容易に読み取れるのだけれど、メロスの思念は紆余曲折を経て、ただただ「辿り着く」という事に結晶化されている。つまり物語として、それ故の有無を言わせぬ「感動」を提示してくる、そこには「的」という文字はつかない。
 ・・まあこのイチャモンは史実上の龍馬に対する話じゃなくて、「脚本」の問題なんだけど(笑)。

土佐藩での下士上士をちゃんと扱っているくせに、その問題点の核心には迫ろうとしない。他の幕末期の動乱エピソードをそれなりに取り上げてるのに、それぞれの問題や課題については徹底的にスルーする。

要するにそれらは主人公を際だたせる為の「時代感」、背景にしか過ぎない、というとらえ、確かに視聴者が重苦しい文芸作品をNHK大河に求めているわけではないのは判るんだけど、、。
 脚本は、新しい角度で人間、龍馬を描くという時に、そういう事にあまり関わらないでも、新しいアプローチで脚本展開が出来ると踏んでるみたい。
 でも龍馬伝が2部を終えようとしているのに、未だに主人公の龍馬がふらふらしてるだけの格好いいあんちゃんにしか見えないのは、多分にこの「新しいアプローチ」に原因があるのではないか。
 これはずっと前に山本晋也監督が「涙が出るからって感動してるってわけじゃない。泣くなんて簡単だろう。感動ってもっと凄いもんなんだよ。ずんとしてて、それで自分が変わっちゃうようなね。今、みんな感動・感動って言い過ぎだよ。作り手も受け手もね。本気で作ったら、黙ってても感動を与えられるものは与えられる」みたいな事を言ってたけど、これには同感。
勿論、「この映画ハンカチをご用意下さい」ってゆー構えもあっていいけどね。問題はそのスタンスの取り方だよね。

とか今日は色々書いちゃったけど、それだけのものを「龍馬伝」は持っているという証。
土佐の牢獄で香川照之大森南朋という脂の乗りきった二人の俳優と抱かれたい男no1福山雅治が汚れきった格好で熱演を繰り広げる姿が他の番組で見られるかってーの(笑)。
でも劇中の以蔵の終わらせ方も、最後を演じる佐藤健君の扱いかたも、やっぱ未だに文句ありだけどね(笑)。
「以蔵」を半平太の自白でその純血を保たせたままあの世にやらせたのはいいとして(でもなんで死の間際に別れた女の顔が浮かぶのよ・・それだけは違うでしょ、違う描き方してたでしょ)佐藤健君にはもうちょっと演技させてあげて欲しかったなぁ。(龍馬だってわざわざ戻ってくるんなら半平太だけじゃなく以蔵にも顔みせろよっ)

PS  介錯を制止する瞬間、半平太の「待ちや!」は、凄かった。タイミングといい気迫といい、半平太のこの時の内面の全てを濃縮して表す最高の演技。素晴らしすぎ、大森南朋!!

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